要素が\( 1 \)個であるような集合であって順序数であるものは\( \{ \emptyset \} \)だけである。証明は以下の通りである。もし\( \alpha = \{ \beta \} \)が順序数だとすると、推移的集合の性質から\( \beta \subset \alpha \)であるが、\( \alpha \)の部分集合は\( \emptyset \)と\( \alpha \)だけである。しかし、\( \alpha = \beta \)となるとこれはZFC(数学の基本的なルール)である「正則性公理」に反することが知られているため、\( \alpha = \emptyset \)とするしかない。\( \alpha = \{ \emptyset \} \)のとき\( \langle \alpha, \{ (\beta, \gamma) \mid \beta, \gamma \in \alpha かつ \beta \in \gamma \} \rangle \)は整列集合になっているので、これは唯一の要素が\( 1 \)個であるような順序数である。
===第7節 超限順序数と超限帰納法===説明は省略するが、要素が\( 2 \)個である順序数は\( \{ \emptyset, \{ \emptyset \} \} \)のみであることが知られている。一般に、任意の\( n \in \mathbb{N} \)に対し、要素が\( n \)個であるような順序数はただ一つ存在する。要素が\( n \)個であるような順序数を\( O_n \)とすると、\( O_0, \cdots, O_4 \)は次のようになる:
$$ O_0 = \emptyset $$
$$ O_1 = \{ \emptyset \} = \{ O_0 \} $$
$$ O_2 = \{ \emptyset, \{ \emptyset \} \} = \{ O_0, O_1 \} $$
$$ O_3 = \{ \emptyset, \{ \emptyset \}, \{ \emptyset, \{ \emptyset \} \} \} = \{ O_0, O_1, O_2 \} $$
$$ O_4 = \{ \emptyset, \{ \emptyset \}, \{ \emptyset, \{ \emptyset \} \}, \{ \emptyset, \{ \emptyset \}, \{ \emptyset, \{ \emptyset \} \} \} \} = \{ O_0, O_1, O_2, O_3 \} $$
一般に、\( n > 0 \)であるとき、\( O_n = \{ O_0, \cdots, O_{n-1} \} \)であることが知られている。
また、\( n > 1 \)であれば、
$$ O_n = \{ O_0, \cdots, O_{n-2}, O_{n-1} \} = \{ O_0, \cdots, O_{n-2} \} \cup \{ O_{n-1} \} = O_{n-1} \cup \{ O_{n-1} \} $$
と「漸化式」のように書ける。また、任意の集合\( A \)に対して\( \mathrm{succ}(A) \)を\( A \cup \{ A \} \)とすれば、これは「\( A \)の要素に\( A \)自身を追加したもの」という集合になっており、
$$ O_n = \mathrm{succ}(O_{n-1}) $$
と簡潔に書くことができる。
===第7節 超限順序数===
有限集合の順序数は上にあげた\( O_n \)だけだが、順序数の中には無限集合であるようなものが存在する。例えば、
$$ O_{\omega} = \{ O_0, O_1, O_2, \cdots \} $$
という集合は順序数である。
==第1½章 カントールの対角線論法==