ガラパゴ累乗定理

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2019年9月2日 (月) 10:11時点におけるみゆ (トーク | 投稿記録)による版
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みゆの累乗恒等式(みゆのるいじょうこうとうしき)とは、複素数 $$z$$ の累乗を $$z$$ の一次式で表す恒等式である。

この恒等式は、実数 $$+1$$ と複素数 $$z$$ を基底の元とする $$\mathbb{R}^2$$ を想定することにより幾何学を代数的に扱うことを主目的として みゆ により考案された。


概要

複素数 $$z$$ の 正整数 $$n$$ 乗を、$$r=2\mathrm{Re}(z)$$ と $$l=|z|^2$$ を用いて次のように表す。

$$\displaystyle z^n=\left[\sum_{k=0}^{\lfloor (n-1)/2\rfloor}\binom{n-k-1}{k}(-1)^kr^{n-2k-1}l^{k}\right]z-\left[\sum_{k=0}^{\lfloor (n-2)/2\rfloor}\binom{n-k-2}{k}(-1)^kr^{n-2k-2}l^{k}\right]l$$
$$z^1=z$$
$$z^2=rz-l$$
$$z^3=(r^2-l)z-rl$$
$$z^4=(r^3-2rl)z-(r^2-l)l$$
$$z^5=(r^4-3r^2l+l^2)z-(r^3-2rl)l$$
$$\quad\quad\quad\quad\vdots$$


特に $$z=e^{i\theta}$$ のとき、$$r=2\cos\theta$$、$$l=1$$ であることから

$$\displaystyle z^n=\left[\sum_{k=0}^{\lfloor (n-1)/2\rfloor}\binom{n-k-1}{k}(-1)^k(2\cos\theta)^{n-2k-1}\right]z-\sum_{k=0}^{\lfloor (n-2)/2\rfloor}\binom{n-k-2}{k}(-1)^k(2\cos\theta)^{n-2k-2}$$
$$z^1=z$$
$$z^2=2z\cos\theta-1$$
$$z^3=(4\cos^2\theta-1)z-2\cos\theta$$
$$z^4=(8\cos^3\theta-4\cos\theta)z-(4\cos^2\theta-1)$$
$$z^5=(16\cos^4\theta-12\cos^2\theta+1)z-(8\cos^3\theta-4\cos\theta)$$
$$\quad\quad\quad\quad\vdots$$

導出

$$\{a,b\in\mathbb{Z}\}、\{z\in\mathbb{C}\}$$ において、$$+1$$ と $$+i$$ を基底の元とする $$\mathbb{R}^2$$ 上の複素数 $$z=a+bi$$ を次のように二乗する。

\begin{align} z^2=&(a+bi)(a+bi)\\ =&(a+bi)(2a-(a-bi))\\ =&2a(a+bi)-(a+bi)(a-bi)\\ =&2a(a+bi)-(a^2+b^2)\\ =&2a(a+bi)-\sqrt{a^2+b^2}^2\\ =&2\mathrm{Re}(z)z-|z|^2\\ \end{align}

ここで、$$r=2\mathrm{Re}(z)$$、$$l=|z|^2$$ と置くと

\begin{align} z^2=rz-l \end{align}

両辺に $$z$$ を乗じると $$z^3=rz^2-lz$$ となり、右辺に $$z^2=rz-1$$ を代入することで $$z$$ の一次式へと変形できる。この操作を再帰的に繰り返し、任意の整数乗を一次式へと帰結させて恒等式を得る。

幾何への応用

複素平面上において、$$0$$ を始点とし $$+1$$ を終点とするベクトル $$\vec{s}$$ と、同じく $$0$$ を始点とし実数ではない任意の複素数 $$z$$ を終点とするベクトル $$\vec{t}$$ は線形独立である。$$\vec{t}$$ を、原点を中心として $$\vec{s}$$ と $$\vec{t}$$ の成す角度の整数倍回転させて得られるベクトル $$\vec{u}$$ は、この累乗恒等式によって $$\vec{s}$$ と $$\vec{t}$$ を基底の元とするベクトル空間上に表現可能である。

みゆの三辺比定理

みゆの三辺比定理は、三角形の二辺のなす角が $$\theta~\mathrm{rad}$$ である場合の三辺比は2つの変数からなる代数式の比で表せる、ということを示す定理であり、

$$x^2-y^2$$ : $$2xy-2y^2\cos\theta$$ : $$x^2+y^2-2xy\cos\theta$$

として示される。これは $$z^{i(\pi-\theta)}$$ として $$(x+yz)^2=x^2+y^2z^2+2xyz$$ にみゆの累乗恒等式を適用することで導くことができる。