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ガラパゴ累乗定理

2019年9月1日 (日) 08:26時点におけるみゆ (トーク | 投稿記録)による版

みゆの累乗恒等式(みゆのるいじょうこうとうしき)とは、複素数 $$z$$ の累乗を $$z$$ の一次式で表す恒等式である。

この恒等式は、実数 $$+1$$ と複素数 $$z$$ を基底の元とする $$\mathbb{R}^2$$ 上で代数的に幾何を扱うことを主目的として みゆ により考案された。


目次

概要

複素数 $$z$$ の 正整数 $$n$$ 乗を、$$r=2\mathrm{Re}(z)$$ と $$l=|z|^2$$ を用いて次のように表す。

$$\displaystyle z^n=\left[\sum_{k=0}^{\lfloor (n-1)/2\rfloor}\binom{n-k-1}{k}(-1)^kr^{n-2k-1}l^{k}\right]z-\left[\sum_{k=0}^{\lfloor (n-2)/2\rfloor}\binom{n-k-2}{k}(-1)^kr^{n-2k-2}l^{k}\right]l$$
$$z^1=z$$
$$z^2=rz-l$$
$$z^3=(r^2-l)z-rl$$
$$z^4=(r^3-2rl)z-(r^2-l)l$$
$$z^5=(r^4-3r^2l+l^2)z-(r^3-2rl)l$$
$$\quad\quad\quad\quad\vdots$$


特に $$z=e^{i\theta}$$ のとき、$$r=2\cos\theta$$、$$l=1$$ であることから

$$\displaystyle z^n=\left[\sum_{k=0}^{\lfloor (n-1)/2\rfloor}\binom{n-k-1}{k}(-1)^k(2\cos\theta)^{n-2k-1}\right]z-\sum_{k=0}^{\lfloor (n-2)/2\rfloor}\binom{n-k-2}{k}(-1)^k(2\cos\theta)^{n-2k-2}$$
$$z^1=z$$
$$z^2=2z\cos\theta-1$$
$$z^3=(4\cos^2\theta-1)z-2\cos\theta$$
$$z^4=(8\cos^3\theta-4\cos\theta)z-(4\cos^2\theta-1)$$
$$z^5=(16\cos^4\theta-12\cos^2\theta+1)z-(8\cos^3\theta-4\cos\theta)$$
$$\quad\quad\quad\quad\vdots$$

導出

$$\{a,b\in\mathbb{Z}\}、\{z\in\mathbb{C}\}$$ において、$$+1$$ と $$+i$$ を基底の元とする $$\mathbb{R}^2$$ 上の複素数 $$z=a+bi$$ を次のように二乗する。

\begin{align} z^2=&(a+bi)(a+bi)\\ =&(a+bi)(2a-(a-bi))\\ =&2a(a+bi)-(a+bi)(a-bi)\\ =&2a(a+bi)-(a^2+b^2)\\ =&2a(a+bi)-\sqrt{a^2+b^2}^2\\ =&2\mathrm{Re}(z)z-|z|^2\\ \end{align}

ここで、$$r=2\mathrm{Re}(z)$$、$$l=|z|^2$$ と置くと

\begin{align} z^2=rz-l \end{align}

両辺に $$z$$ を乗じることで右辺の $$z$$ の次数が上がり、$$z^2=rz-1$$ を代入することで $$z$$ の一次式へと変形できる。この操作を再帰的に繰り返すことにより、任意の整数乗を一次式へと帰結させて恒等式を得る。

幾何への応用

複素平面上において、$$0$$ を始点とし $$+1$$ を終点とするベクトル $$\vec{s}$$ と、同じく $$0$$ を始点とし実数ではない任意の複素数 $$z$$ を終点とするベクトル $$\vec{t}$$ は線形独立である。$$\vec{t}$$ を、原点を中心として $$\vec{s}$$ と $$\vec{t}$$ の成す角度の整数倍回転させて得られるベクトル $$\vec{u}$$ は、この累乗恒等式を用いることで $$\vec{s}$$ と $$\vec{t}$$ を基底の元とするベクトル空間上で表現することが可能となる。

みゆの三辺比定理

$$+1$$ と $$z=e^{i\theta}$$ を元とする基底空間において、内角の一つに $$\psi=(\pi-\theta)~\mathrm{rad}$$ をもつ三角形を想定する。

$$\psi~\mathrm{rad}$$ である内角の対辺を $$x+yz$$ で表現する。ここで見出すことのできる三角形の三辺比は、

$$x$$ : $$y$$ : $$|x+yz|$$

であるが、余弦定理を用いることで次のようにも表現できる。

$$x$$ : $$y$$ : $$\sqrt{x^2+y^2-2xy\cos\psi}$$

この三角形における $$\psi~\mathrm{rad}$$ の対辺に対し、原点側の内角を2倍して得られる直線は

$$(x+yz)^2=x^2+y^2z^2+2xyz$$

を通る。この座標はみゆの累乗恒等式を用いることで

$$(x+yz)^2=x^2+y^2(2z\cos\theta-1)+2xyz=(x^2-y^2)+2(x+y\cos\theta)yz$$

と表すことができ、これによって示される新たな三角形の三辺比は

$$x^2-y^2$$ : $$2(x+y\cos\theta)y$$ : $$|x+yz|^2$$

である。これは先程の余弦定理を用いた表現によって

$$x^2-y^2$$ : $$2(x+y\cos\theta)y$$ : $$\sqrt{x^2+y^2-2xy\cos\psi}^2$$

と置き換えることができ、$$\theta$$ と $$\psi$$ の関係から

$$x^2-y^2$$ : $$2(x-y\cos\psi)y$$ : $$x^2+y^2-2xy\cos\psi$$

と言える。この代数比は、内角の一つに $$\psi~\mathrm{rad}$$ を持つ三角形の三辺比を示している。

余弦定理を用いると以下の恒等式を導くことができ、

$$(x^2-y^2)^2+\left[2(x-y\cos\psi)y\right]^2-4(x^2-y^2)(x-y\cos\psi)\cos\psi=(x^2+y^2-2xy\cos\psi)^2$$

三辺比をこのような代数比で表現できるという定理を、発見者である みゆ にちなんでみゆの三辺比定理という。


この定理により、$$\cos\psi$$ が有理数値をとるような内角を持つ三角形の三辺比は代数を用いて整数比で表すことができる。 \begin{array}{lrl} 内角の一つが~\psi=~\frac{\pi}{2}~\mathrm{rad}&(90^{\circ})&~&x^2-y^2&:&2xy&:&x^2+y^2\\ 内角の一つが~\psi=~\frac{\pi}{3}~\mathrm{rad}&(60^{\circ})&~&x^2-y^2&:&2xy-y^2&:&x^2+y^2-2xy\\ 内角の一つが~\psi=\frac{2\pi}{3}~\mathrm{rad}&(120^{\circ})&~&x^2-y^2&:&2xy+y^2&:&x^2+y^2+2xy\\ \end{array}