==第1¾章 カントールの対角線論法==
===第1節 連続体濃度===
連続体濃度は\( \aleph_0 \)ではないことが知られている。この節では、このことを背理法で証明する。
[実数と自然数に対するカントールの対角線論法を挿入]そのために、連続体濃度が\( \aleph_0 \)であると仮定する。すなわち、\( \mathbb{N} \)と\( \mathbb{R} \)の濃度が同じ、すなわち\( \mathbb{N} \)から\( \mathbb{R} \)への全単射が存在すると仮定する。そのような全単射をひとつとり\( f \)とする。\( f \)の値を次のようにリストアップする。ただし、右辺は実数の十進数表記である: \begin{align*}f(0) =& \pm a_{00}.a_{01}a_{02}a_{03} \cdots \\f(1) =& \pm a_{10}.a_{11}a_{12}a_{13} \cdots \\f(2) =& \pm a_{20}.a_{21}a_{22}a_{23} \cdots \\f(3) =& \pm a_{30}.a_{31}a_{32}a_{33} \cdots \\\vdots&\end{align*} ここで、実数\( r' \)を以下の方法で構成する: * \( r' \)の符号は\( + \)とする。* \( r' \)の整数部分は、\( a_{00} \)と異なる数にする。* \( r' \)の小数第\( n \)位は、\( 0, 9, a_{nn} \)のどれとも異なる数にする。すなわち、\( r' \)の小数第\( n \)位が\( f(n) \)の小数第\( n \)位と異なるようにする。\( 0, 9 \)を排除したのは、\( 0.999\cdots = 1.000\cdots \)という問題を避けるためである。 このように構成した\( r' \)に対して方程式\( f(x) = r' \)を考えると、\( x = 0 \)は解ではない。なぜなら、両辺の整数部分が異なるからである。また、任意の自然数\( n \)に対して、\( x = n \)は解ではない。なぜなら、両辺の小数第\( n \)位が異なるからである。 したがって、\( f(x) = r' \)は解を持たず、これは\( f \)が全単射であることに矛盾する。 よって、背理法により、連続体濃度は\( \aleph_0 \)ではないことが示された。 ===第2節 冪集合===集合\( A \)の冪集合\( \mathcal{P}(A) \)を、\( A \)の部分集合全体の集合と定義する。以下に例を示す。 $$ \mathcal{P}(\emptyset) = \{ \emptyset \} $$ $$ \mathcal{P}(\{ X \}) = \{ \emptyset, \{ X \} \} $$ $$ \mathcal{P}(\{ a, b \}) = \{ \emptyset, \{ a \}, \{ b \}, \{ a, b \} \} $$ $$ \mathcal{P}(\{ 1, 2, 3 \}) = \{ \emptyset, \{ 1 \}, \{ 2 \}, \{ 1, 2 \}, \{ 3 \}, \{ 1, 3 \}, \{ 2, 3 \}, \{ 1, 2, 3 \} \} $$ 数学Aの「集合と論理」では、「\( A = \{a, b \} \)の部分集合を全て書け」のような問題があるが、冪集合はそのような問題の答えの両端に\( \{ \)と\( \} \)を付けたものだと考えるとわかりやすいだろう。 もちろん、\( \mathcal{P}(A) \)は無限集合に対しても定義される。例えば、 $$ \{ 1, 3, 25 \} \in \mathcal{P}(\mathbb{N}) $$ $$ \{ x \mid xは正の偶数 \} \in \mathcal{P}(\mathbb{N}) $$ $$ \left\{ \frac{a+b\sqrt{5}}{2} \mid a, b は整数 \right\} \in \mathcal{P}(\mathbb{R}) $$ である。\( \mathcal{P}(A) \)は「\( A \)の部分集合をすべて集めた集合」なので、\( \subset \)ではなく\( \in \)であることに注意せよ。
[一般の集合に対するカントールの対角線論法を挿入]
===第3節 一般連続体仮説===
[一般連続体仮説を挿入]