集合論

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Je le vois, mais je ne le crois pas
(「私にはそれが見えるが、しかし信じることができない」)
        --G.カントール:R.デデキントとの書簡より


集合論とは、集合を中心に扱う数学の分野で、19世紀後半のドイツの数学者ゲオルク・カントール(1845 ~ 1918)によって創始され、その後の現代の数学分野に大きな影響を及ぼした。

また高校数学では、集合論の基礎的な一部とその前提知識として要求される論理がカリキュラムとして数学Aに導入されている。

前史

冒頭で触れたように、集合論という分野はカントールによって創始された。カントールはフーリエ級数に関する論文「三角級数論の一定理の拡張について」(1872)のなかで現在の集合論に至る基礎的な概念を登場させた。

集合

集合(set)とは「ものの集まり」を意味している。この集められる対象となる「もの」を集合の要素あるいは単に(element)という。(以下、元で統一する。)

また、元が1つもないような集合のことを空集合(empty set)といい、$$\emptyset$$と表現する。

集合を$$X$$、$$X$$の元を$$x$$としたとき、$$x$$ が$$X$$の元であることを、$$x \in X$$ 、あるいは$$x$$が$$X$$の元でないことを、$$x \notin X$$と表し、こうした集合の元と、元が含まれる集合との関係を帰属関係という。


$$X$$の全ての$$x$$が別の集合$$Y$$の元であるような関係( $$x \in X, x \in Y$$)を、$$X \subset Y$$, あるいは$$X \subseteq Y$$と表現し、このような集合同士の関係を包含関係と言い、この関係における集合$$X$$は、集合$$Y$$の部分集合(subset) $$X$$という。また$$x \in X$$であり$$ X \neq Y$$となるような包含関係を真部分集合(proper subset)という。


$$P$$を一つの数学的な命題とする。このとき命題$$P$$を満たすような $$x$$ を$$P(x)$$、また命題$$P$$を満たす $$x$$ 全体を$$\{ x | P(x)\}$$と表現する。

よって、例えば実数全体の集合$$\mathbb{R}$$は次のように表せる。

$$\mathbb{R} = \{x | -\infty < x < \infty \}$$

集合同士の演算

全体集合を$$U$$, $$U$$の元を$$x$$、部分集合を$$A, B$$とする。

このとき、$$x$$が$$A, B$$の元のいずれかであるような集合を和集合といい、次のように表す。

$$A \cup B \equiv \{ x \in U | x \in A$$ または $$ x \in B\}$$

また $$x$$ が$$A$$と$$B$$の共通の元であるような集合を共通集合いい、次のように表す。

$$A \cap B \equiv \{ x \in U | x \in A$$ かつ $$x \in B\}$$

このような、和集合$$A \cup B$$は、AとBの「結び」(join)と呼び、共通集合$$A \cap B$$は、AとBの「交わり」(meet)と呼ぶ。


$$A \cap B = \emptyset$$のとき、AとBは互いに素である。このときの$$A \cup B$$を$$A + B$$と表すことができ、これを$$A$$と$$B$$の直和という。

$$x$$が2つの$$A, B$$に対して、$$A$$のみの元であるような集合を差集合、またこのときの$$B$$を$$A$$に関する補集合$$B^\complement$$と言い、以下のように表すことができる。

$$B^\complement = A \setminus B \equiv \{x \in U | x \in A, x \notin B\}$$

また差集合は$$A-B$$と表すこともできる。


補集合に関する公式としてド・モルガンの法則がある。

$$ (A\cup B)^\complement = A^\complement \cap B^\complement\\ (A\cap B)^\complement = A^\complement \cup B^\complement $$

写像

集合を$$A, B$$、$$A, B$$の元をそれぞれ$$a, b$$とする。

$$A$$の各元に$$B$$の1つの元を対応させるような規則 $$f$$を$$A$$から$$B$$への写像(map)といい、$$f: A \rightarrow B$$と表す。

このとき$$A$$を 始域または$$f$$の定義域、$$B$$を終域、または $$f$$の値域という。

像と逆像

写像 $$f:A\rightarrow B$$によって$$a \in A$$に対応する$$B$$の元を、$$a$$の$$f$$によるといい、$$f(a)$$と表す。

一方で、$$B$$の元が対応する$$A$$のことを逆像といい、この場合、$$f^{-1}(a)$$と表す。


新たな集合$$C$$を考え、またその元を$$c$$とする。 2つの写像$$f: A \rightarrow B, g: B \rightarrow C$$に対して、$$f$$と$$g$$のこれを合成といい、$$f \circ g$$と表す。

またこの$$f \circ g$$は$$A$$から$$C$$への写像を意味している。

写像$$f: A\rightarrow B$$を考える。

このとき、始域となる集合$$A$$と終域の集合$$B$$の元が一致するときの関係を全射という。またこれを上への写像とも呼ぶ。

一方で、始域$$A$$の元が終域$$B$$の元と一対一で対応しているような関係を単射という。またこれを一対一写像とも呼ぶ。

さらに、始域$$A$$から終域$$B$$への上への一対一写像のとき、つまり全射かつ単射であるような関係を全単射と呼ぶ。