ここでは一旦順序数から離れ、全射・単射・全単射の概念に触れる。
===第0節 写像===高校数学では「入力が実数で出力も実数」の関数を考えることが多いが、ここではその入力と出力を別の集合にすることを考える。例えば「入力が\( \{ a, b, c \} \)で出力が\( \{ 1, 2, 3 \} \)」の関数\( f \)を $$ f(a) = 2, f(c) = 1, f(b) = 3 $$ のように定義すれば、これは1つの関数になっている。あるいは、高校数学では\( y = \sqrt{x} \)という関数を扱うが、これは\( x < 0 \)では定義されない。すなわち、\( y = \sqrt{x} \)は「入力が\( \{ x \mid x \geq 0 \} \)で出力が\( \mathbb{R} \)」の関数だと思えばよい。 「出力は\( \{ y \mid y \geq 0 \} \)ではないのか?」と思った人もいるだろう。しかし、出力と値域は必ずしも一致しなくてもよい。出力は単に「\( y = \sqrt{x} \)の\( y \)をどのように扱うか」を表すものであり、出力全体が値域に対応している必要はない。 大学の数学用語に合わせるため、入力のことを'''定義域'''、出力のことを'''終域'''と呼ぶことにする。上で述べたとおり、終域と値域は異なる概念である。 ===第1節 全射===定義域が\( A \)、終域が\( B \)であるような関数\( f \)が全射であるとは、\( y \in B\)を定数としたときの\( x \)の方程式 $$ y = f(x) $$ が\( x \in A \)の範囲に必ず1個以上の解を持つことである。 たとえば、\( A = \mathbb{R}, B = \mathbb{R}, f(x) = x^3-3x \)のとき、どのような\( y \in \mathbb{R} \)に対しても\( x^3 - 3x = y \)は実数解を持つ。したがって、\( f(x) = x^3 - 3x \)は全射である。 同じ関数であっても、定義域と終域によって全射になったりならなかったりする。 \( y = \sqrt{x} \)を考える。定義域は\( \{ x \mid x \geq 0 \} \)である。もし終域が\( \mathbb{R} \)であれば、これは全射ではない。なぜなら、\( \sqrt{x} = -1 \)は定義域すなわち\( \{ x \mid x \geq 0 \} \)の範囲に解を持たないからである。 しかし、終域を\( \{ y \mid y \geq 0 \} \)とすれば、これは全射となる。なぜなら、\( y \geq 0 \)を満たすどんな\( y \)についても\( y = \sqrt{x} \)は解を持つ(\( x = y^2 \)が解である)からである。この場合、\( y = -1 \)は終域に含まれていないので、考えている\( y \)の範囲から除外されている。 ===第2節 単射===定義域が\( A \)、終域が\( B \)であるような関数\( f \)が全射であるとは、\( y \in B\)を定数としたときの\( x \)の方程式 $$ y = f(x) $$ が\( x \in A \)の範囲に必ず1個以下(0個でもよい)の解を持つことである。 たとえば、\( A = \mathbb{R}, B = \mathbb{R}, f(x) = x^3-3x \)のとき、\( y = 0 \)に対して\( x^3 - 3x = 0 \)は異なる3つの実数解を持つ。したがって、\( f(x) = x^3 - 3x \)は単射ではない。 一方、\( A = \{ x \mid x \geq 1 \}, B = \mathbb{R}, f(x) = x^3-3x \)とすると、これは単射である。なぜなら、どんな実数\( y \)に対しても\( x^3 - 3x = y \)は定義域すなわち\( x \geq 1 \)の範囲に実数解を最大でも1個しか持たないからである。証明は読者の演習問題とする(実際にグラフを描くとこのことは明らかになる)。 [ここに√xの例を挿入] ===第3節 全単射=== ==第1½章 集合の濃度=== ==第1¾章 カントールの対角線論法==
[実数と自然数に対するカントールの対角線論法を挿入]
[一般の集合に対するカントールの対角線論法を挿入]
==第2章 基数と共終数==