===第5節 推移的集合===
集合\( A \)が推移的集合であるとは、\( A \)の全ての要素がそれ自体\( A \)の部分集合であることである。「要素がそれ自体部分集合」とはいささか奇妙だが、以下の例を見れば納得するだろう。
\( \{ \emptyset \} \)は推移的集合である。なぜなら、\( \{ \emptyset \} \)の要素\( \emptyset \)は\( \{ \emptyset \} \)の部分集合だからである(どんな集合に対しても\( \emptyset \)はその部分集合となることに注意しよう)。
\( \{ \{ \emptyset \} \} \)は推移的集合でない。なぜなら、\( \emptyset \) は\( \{ \{ \emptyset \} \} \)の要素ではなく、したがって\( \{ \{ \emptyset \} \} \)の要素\( \{ \emptyset \} \)は\( \{ \{ \emptyset \} \} \)の部分集合ではないからである。
\( \{ \emptyset, \{\emptyset\}, \{\{\emptyset\}\} \} \)は推移的集合である。証明は読者への演習問題とする。
特殊な例として、\( \emptyset \)がある。\( \emptyset \)はそれ自身が推移的集合である。なぜなら、もし「\( \emptyset \)の全ての要素がそれ自体\( \emptyset \)の部分集合である」が偽だとすると、「\( \emptyset \)の要素だが\( \emptyset \)の部分集合でないもの」という反例が存在することになるが、そのような反例は存在しないからである。