数雀(すうじゃん、Suhjong)は、任意団体「数雀協会」の代表者が商標出願中の等式パズルである。
目次
等式パズルとは
等式パズルとは、任意個数の「数字」を左辺と右辺に分け、「演算子」を用いて等式を成立させるパズルの総称である。 任意個数というのは、等式の左辺と右辺で用いることのできる「数字」の総数で、パズルの制約として一定数あるいは可変数を定めることができる。 「数字」とは数値としての定量を表した一文字のことで、一般的には十進法の0~9という十種類が挙げられる。(記数法の指定が明確であれば何進法でも可)
例えば、後述する「数雀」の「基本ルール」では十進法の十種類の「数字」を五個使用し、左辺と右辺の任意箇所に「+」や「×」等の演算子を用いた場合に両辺の計算結果が等しくなるように成立させる等式パズルということになる。
数雀の概要
基本ルール
プレイ人数は2人。[0]~[9] の10種×5枚ずつ(計50枚)の札を使用。
- 5枚ずつ手札にとり、相手にオープンした状態でゲームを進行する。最初のターンでは勝ち目がなければ「降り」を宣言できる。
- 毎ターン手札から1枚以上(熟練度により上限固定)捨て、手札が5枚を超えないよう相手の捨札から任意枚数(0でも可)拾って補充する。
- 手札が5枚に満たない場合は山から引いて補充し、5枚になったら相手にターンを譲る。ターンを譲られたプレイヤーは自分の捨札を河から流す。
- 2ターン目以降、相手の河からの補充のみで役ができる場合はターンの始めに「勝負」と宣言できる。
- 「勝負」を宣言された側のプレイヤーは1ターンの猶予が与えられ、その後両者の役の点数がそれぞれの獲得点数となる。
役の作り方
- 3枚組の左辺と2枚組の右辺に分ける。
- 使える演算は「掛け算」「足し算」「位取り」の3種類。
- 左辺と右辺の数値が揃ったら役の完成である。
[2][2][3][3][7] の場合の一例
- 左辺:[3]×[7]+[2] → 23
- 右辺:[2][3] → 23
- [3]×[7]+[2]=[2][3] で23点の役
ゲームの特徴
- シンプルながら奥が深い
- 小学生でも遊べる(答えが2桁以内の足し算、掛け算のみ)
- 手札が相手に常時オープン、そこから生まれる戦略性
- 1ターンごとに変化する先の読みにくい戦況と逆転要素
- 相手のクセを見抜いて誘導、ブラフによる心理戦
- 運の要素も大きいが、その運に気がつきにくいという罠
- 自然とパターンを覚え、慣れてくるとあまり計算しなくなる
- 気がつくと数が素因数分解の形で見えるようになる
用語
数雀とは、狭義の意味では後述する「基本ルール」を採用したゲーム、広義の意味では「基本ルール」をベースとする「派生ルール」を採用した等式パズルの総称である。
n進法のn種類の各「数字」に対応するデザインが一種類だけ施された「札」(以後、このデザインをもって単に「数字」と呼ぶ)のうち、何枚かを「手札」として「発掘(マイニング)」をしながら「役」を作り合うことでゲームが進行する。
「発掘」とは、「手札」内の「数字」を用いて等式を見つけ出そうと試みる行為である。等式が成立する状態のことを「役」と呼び、その両辺の計算結果がその「役」における点数となる。同じ「手札」でも複数の方法で等式が成立する場合があり、より高い点数の「役」を「発掘」することがゲームの肝となる。
「札」の大きさや形状全て均一とするのが望ましいが、ゲームの進行に支障のない限りにおいては特別規定はない。各「札」には先述の「数字」が一種類対応しており、その「札」の「数字」を全てのプレイヤー(ゲーム参加者)が確認できる状態にすることをその「札」を「見せ」ると呼び、推測不可能な状態にすることをその「札」を「伏せ」ると呼ぶ。
プレイに使用する領域を「場」と呼ぶ。「場」は各プレイヤーが一望しやすく、かつ、「札」を並べるのに適した場所が望ましいが、ゲームの進行に支障のない限りにおいて特別規定はない。
「場」には「山」「海」「河」「地」と呼ばれるエリアを設けるものとする。このうち、「山」と「海」はプレイヤーに共通のエリアで、「河」と「地」は各プレイヤーがそれぞれ個別に持つエリアとなる。
「山」に置かれた「札」を「山札」、「海」に置かれた「札」を「流し札」、「河」に置かれた「札」を「捨て札」、「地」に置かれた「札」を「手札」と呼び、このうち「山札」は常に「伏せ」ておき、「捨て札」と「手札」は常に「見せ」て置かなければならないが、「流し札」については特に取り決めはない。
ゲームの進行は「局」という単位で行われ、一「局」ごとに得られる点数の総得点で最終的な勝敗が決まる。また、何「局」行うかは各プレイヤー合意の元で決められる。各「局」では、プレイヤーごとに「手番(ターン)」があり、自分の「手番」の時のみ「捨て札」を「海」に流したり、「手札」を「河」に捨ててその枚数分を自分以外のプレイヤーの「捨て札」や「山札」から補充することができる。
もし自分の「手番」以外でこれらの行為や「山札」を覗く行為、その他ゲームの進行に何らかの支障をもたらしたプレイヤーにはペナルティーが課せられる。ペナルティーについては各プレイヤー合意の元で適切に執り行うものとする。
基本ルール(詳細)
[0] から [9] の「数字」を十種類各五枚ずつ(計五十枚)使用し、2人でプレイする。
まず、両プレイヤーの合意が得られる方法で十分にシャッフルされた五十枚の「札」を 「山」に置いて「山札」とする。
次に、両プレイヤー合意の元でどちらか一方のプレイヤーを「先手」と決める。
「手札」の規定枚数は五枚、両プレイヤーは「山札」から五枚ずつ「札」を取り、自分の「地」に置くことで自分の「手札」とする。
「先手」の「手番」から「局」が開始する。
自分の「手番」が渡ってきたプレイヤーは、まず自分の「河」にある「捨て札」を全て「海」へ流す。(もちろん、「局」の開始直後には河には何もない。)
ここで、
まだ相手が「勝負」を宣言していない場合:
- 「局」開始後、最初の「手番」であれば「降り」を宣言することができる。宣言した場合はその場で「局」が終了する。この時、相手プレイヤーに対して事前に取り決めた点数(特に定めない場合には 10点)を獲得させるなどのペナルティを課すことができる。
- 「局」開始後二回目以降の「手番」であれば「勝負」と宣言することができる。(宣言した場合については後述する。)
- 自分の「手札」から事前に取り決めた枚数以内を自分の「河」に捨て、その分を相手の「捨て札」から拾うことで自分の「手札」を規定枚数まで補充する。但し、「勝負」と宣言をした場合は相手の「捨て札」より多い枚数を捨てることはできない。「勝負」と宣言しなかった場合は、相手の「捨て札」から任意の枚数を補充した後(補充しなくても可)、残りを「山」から規定枚数になるまで補充する。
- 相手に「手番」を渡す。
相手が「勝負」を宣言している場合:
- 自分の「手札」から事前に取り決めた枚数以内を自分の「河」に捨て、その分を相手の「捨て札」から必要な「札」のみ補充(規定枚数に満たない場合には残りを「山」から規定枚数になるまで補充)し、点数申告に移る。
点数申告では、各自の「手札」より「役」と「点数」を自己申告する。「役」は等式の成立によって示するが、成立しない場合の点数は0点となる。ここで申告した点数が、自分の総得点に追加されて「局」が終了する。
役の発掘
- 掛け算:[A]×[B]
- 足し算:[A]+[B]
- 位取り:[A][B] 十進法であれば [A]×10+[B]
手札を [A][B][C][D][E] の五枚(順不同)とした場合
- [C][D]×[E]=[A][B]
- [C][D]×[E]=[A]×[B]
- [C][D]×[E]=[A]+[B]
- [C][D]+[E]=[A][B]
- [C][D]+[E]=[A]×[B]
- [C][D]+[E]=[A]+[B]
- [C]×[D]×[E]=[A][B]
- [C]×[D]×[E]=[A]×[B]
- [C]×[D]×[E]=[A]+[B]
- [C]×[D]+[E]=[A][B]
- [C]×[D]+[E]=[A]+[B]
- [C]×[D]+[E]=[A]×[B]
- ([C]+[D])×[E]=[A][B]
- ([C]+[D])×[E]=[A]×[B]
- ([C]+[D])×[E]=[A]+[B]
- [C]+[D]+[E]=[A][B]
- [C]+[D]+[E]=[A]×[B]
- [C]+[D]+[E]=[A]+[B]
のいずれかにて等式が成立する場合の [A][B][C][D][E] が「役」となり、左辺または右辺の計算値がその「役」の点数となる。
基本戦略
ここでは、基本ルールにおける初歩的な戦略についてのみ説明する。
初心者
手札を数字の大きい順に並べたときの上位2枚を位取りした値を「ポテンシャル」と呼ぶ。例えば「[3][4][5][6][7] という手札であれば [7][6] つまり 76 がポテンシャルである。手札の点数がすぐに分からなくともポテンシャル以上の点数を作ることは絶対にできないため、戦況をすばやく判断するには非常によい指標となる。
ポーカーでいうところのツーペアやスリーカード以上は扱いにくいため、序盤ではできる限りワンペア以下の状態となるよう手札を整えるようにするとよい。ワンペア以下の場合の初歩的な戦略としては次のようなものがある。
- 手札が [A][A][B][C][D] のような場合、[B]と[C]と[D] の3枚が [B]+[C]=[D] の関係であれば [A][B]+[C]=[A][D] という役を作ることができる。具体的には [8][8][2][3][5] であれば [8][2]+[3]=[8][5] である。
- 手札が [A][A+1][B][C][D] のような場合、[B]と[C]と[D] の3枚が [B]+[C]=10+[D] の関係であれば [A][B]+[C]=[A+1][D] という役を作ることができる。具体的には [7][8][1][5][6] であれば [7][5]+[6]=[8][1] である。
上記の役は初心者にも作りやすいが、この場合に作れる点数は [A][D] あるいは [A+1][D] に固定される。よって [A] の札が大きいほど無難といえる。慣れてきたら次のような役も視野に入れるとよい。
- [2][4][8][A][B]、[2][4][9][A][B] のような場合、[4][A]x[2]=[8][B] や [4][A]x[2]=[9][B] という高得点役を狙える。
高い点数の役を作りやすい札としては、[9]、[8]、[6]、[4]、[2] が挙げられ、中でも最も作りやすいのは96点の役である。例えば [9][8][6][4][2] だけでも [4][8]x[2]=[9][6] と 96点を作ることができる。これらの札を一枚ずつ集め、その他の札を捨てるようにすると、様々な役へのシフトがスムーズとなる。自分の待ち札の数が増えれば相手が捨てられない札が増えるということにも繋がり、うまく利用すれば相手の動きに制限をかけることができるようになる。
脱初心者への最初の一歩は、山にどの札がどのくらい残っているかを把握するようにすることである。数雀は先の展開が読みにくいゲームであるが、これを把握するだけでもある程度の予測は立てられるようになる。
中級者
自分の手札だけではなく相手の手札や捨て方に注意を配ると相手の狙いやクセが見えてくる。相手の欲しそうな手札を捨てて相手が捨てそうな札を自分の待ちにするというテクニックは非常に有用で、勝負をかけるためには必ず相手の手札から拾う必要があるため常に意識しておきたい。
[1]、[3]、[7] を用いたトリッキーな役(例えば [1][3]x[7]=[9][1])や、([A]+[B])x[C]=[D][E] という役は、慣れていないと気が付きにくい。相手の技量や集中度にもよるが、他の分かりやすい役を狙っているように見せかけてこのような役にシフトすると相手の意表を突きやすい。
[4][9]x[2]=[9][8]、[1][4]x[7]=[9][8]、([A]+[B])x[7]=[9][8]([A]+[B]=14)といった98点役はオーソドックスなため中級者クラスの相手には見破られやすいが、確実に準最高点を狙える手であるため相手の動きを牽制するために用いる。他の役でもこのような高得点の役を利用した牽制やブラフは有用で、うまく使えば場の流れを支配することができる。
相手の点数より高い点数を作るに越したことはないが、勝てそうにない局ではなるべく点差を縮めて負けるというのも戦略の一つである。特に相手とのポテンシャル差が大きいときは「降り」を活用することも視野に入れるとよい。総合点を考えた采配を覚えることも重要である。