「ガラパゴ三辺比定理」の版間の差分
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− | '''みゆの三辺比定理'''(みゆのさんぺんひていり)とは、ユークリッド平面上の三角形 $$\triangle ABC$$ において、辺 $$AB$$ と 辺 $$AC$$ の成す内角が $$\angle A=\theta~\mathrm{rad}$$ である場合、$$\angle B$$ の角度を偶数倍(それに合わせて辺 $$AB$$ と $$AC$$ の長さを伸縮)して得られる新たな三角形の三辺比は $$AB$$ の長さ、$$AC$$ の長さ、$$\cos\theta$$ | + | '''みゆの三辺比定理'''(みゆのさんぺんひていり)とは、ユークリッド平面上の三角形 $$\triangle ABC$$ において、辺 $$AB$$ と 辺 $$AC$$ の成す内角が $$\angle A=\theta~\mathrm{rad}$$ である場合、$$\angle B$$ の角度を偶数倍(それに合わせて辺 $$AB$$ と $$AC$$ の長さを伸縮)して得られる新たな三角形の三辺比は $$AB$$ の長さ、$$AC$$ の長さ、$$\cos\theta$$ を変数とみなした整式で表せる、という定理である。[[ガラパゴ数学]]の主定理の一つで、特に $$\theta=\frac{\pi}{2}~\mathrm{rad}$$ の場合は'''ピタゴラスの定理II'''、'''ピタツー'''などの愛称で呼ばれる。 |
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− | 辺 $$AB$$ の長さが $$x$$、辺 $$AC$$ の長さが $$y$$、これら二辺の成す内角が $$\theta~\mathrm{rad}$$ であるようなユークリッド平面上の三角形 $$\triangle ABC$$ において、$$\angle B$$ の角度を2倍(それに合わせて辺 $$AB$$ と $$AC$$ の長さを伸縮)して得られる新たな三角形の三辺比は $$x$$、$$y$$、$$\cos\theta$$ | + | 辺 $$AB$$ の長さが $$x$$、辺 $$AC$$ の長さが $$y$$、これら二辺の成す内角が $$\theta~\mathrm{rad}$$ であるようなユークリッド平面上の三角形 $$\triangle ABC$$ において、$$\angle B$$ の角度を2倍(それに合わせて辺 $$AB$$ と $$AC$$ の長さを伸縮)して得られる新たな三角形の三辺比は $$x$$、$$y$$、$$\cos\theta$$ を変数とみなした整式で表すことができる。 |
2019年9月3日 (火) 00:34時点における版
みゆの三辺比定理(みゆのさんぺんひていり)とは、ユークリッド平面上の三角形 $$\triangle ABC$$ において、辺 $$AB$$ と 辺 $$AC$$ の成す内角が $$\angle A=\theta~\mathrm{rad}$$ である場合、$$\angle B$$ の角度を偶数倍(それに合わせて辺 $$AB$$ と $$AC$$ の長さを伸縮)して得られる新たな三角形の三辺比は $$AB$$ の長さ、$$AC$$ の長さ、$$\cos\theta$$ を変数とみなした整式で表せる、という定理である。ガラパゴ数学の主定理の一つで、特に $$\theta=\frac{\pi}{2}~\mathrm{rad}$$ の場合はピタゴラスの定理II、ピタツーなどの愛称で呼ばれる。
概要
辺 $$AB$$ の長さが $$x$$、辺 $$AC$$ の長さが $$y$$、これら二辺の成す内角が $$\theta~\mathrm{rad}$$ であるようなユークリッド平面上の三角形 $$\triangle ABC$$ において、$$\angle B$$ の角度を2倍(それに合わせて辺 $$AB$$ と $$AC$$ の長さを伸縮)して得られる新たな三角形の三辺比は $$x$$、$$y$$、$$\cos\theta$$ を変数とみなした整式で表すことができる。
- $$x^2-y^2$$ : $$2xy-2y^2\cos\theta$$ : $$x^2+y^2-2xy\cos\theta$$
この場合、いずれの辺も $$0$$ ではないとき $$(x^2-y^2)$$ と $$(2xy-2y^2\cos\theta)$$ に対応する二辺の成す角の角度が $$\theta~\mathrm{rad}$$ となる。ここでいう二辺の成す角とは必ずしも内角を指すものではなく、厳密には辺を延長した直線と直線の成す角である。辺 $$AB$$ と辺 $$AC$$ の伸縮によっていずれか一方のみが負数倍となる場合は内角と外角が入れ替わるため、内角としては $$\pi-\theta~\mathrm{rad}$$ となる。
一般に、$$\theta~\mathrm{rad}$$ を内角に持つ三角形の三辺の比は余弦定理によって
- $$x$$ : $$y$$ : $$\sqrt{x^2+y^2-2xy\cos\theta}$$
と表せることが知られているが、平方根項が存在しており整式ではない。
導出
$$+1$$ と $$z=e^{i(\pi-\theta)}$$ を元とする基底空間において、内角の一つに $$\theta~\mathrm{rad}$$ をもつ三角形を想定する。
角度が $$\theta~\mathrm{rad}$$ である内角の対辺を $$x+yz$$ で表現すると、ここに見いだされる三角形の三辺比は、
- $$x$$ : $$y$$ : $$|x+yz|$$
であるが、$$x$$ と $$y$$ に対応する辺の狭角は $$\theta~\mathrm{rad}$$ であるため、余弦定理を用いることで
- $$x$$ : $$y$$ : $$\sqrt{x^2+y^2-2xy\cos\theta}$$
と書き改めることができる。すなわち
- $$|x+yz|=\sqrt{x^2+y^2-2xy\cos\theta}$$
である。ここに示される三角形の $$|x+yz|$$ に対応する辺に対し、
$$x$$ に対応する辺との狭角を2倍して得られる直線は
- $$(x+yz)\times(x+yz)=x^2+y^2z^2+2xyz$$
を通る。(ガラパゴ数学の乗算の項を参照)
この座標はみゆの累乗定理によって \begin{align} (x+yz)^2=&x^2+y^2(2z\cos(\pi-\theta)-1)+2xyz\\ =&x^2+y^2(-2z\cos\theta-1)+2xyz\\ =&(x^2-y^2)+(2xy-2y^2\cos\theta)z\\ \end{align} と $$z$$ の一次式の形で表すことができる。ここで示される新たな三角形の三辺比は
- $$x^2-y^2$$ : $$2xy-2y^2\cos\theta$$ : $$|x+yz|^2$$
であり、先程の余弦定理を用いた表現に書き改めると
- $$x^2-y^2$$ : $$2xy-2y^2\cos\theta$$ : $$x^2+y^2-2xy\cos\theta$$
となる。この比率は二辺の成す角が $$\theta~\mathrm{rad}$$ である三角形の三辺比といえる。
上の例では $$x$$ に対応する辺との狭角を2倍しているが、原理的には偶数倍によって余弦定理の平方根項が偶数乗され、根号が外れて整式となる。
みゆの三辺比恒等式
みゆの三辺比定理で示される三角形に対して余弦定理を用いることで、以下の恒等式を導くことができる。
- $$(x^2+y^2-2xy\cos\theta)^2=(x^2-y^2)^2+(2xy-2y^2\cos\theta)^2-2(x^2-y^2)(2xy-2y^2\cos\theta)\cos\theta$$
拡張ピタゴラス数
二辺の成す角 $$θ$$ において $$\cos\theta$$ が有理数値であるような三角形の三辺比は、みゆの三辺比定理を用いると整数比で表すことができる。
ただし辺の長さが負の値をとる場合、内角と外角が入れ替わることに注意が必要である。その場合の内角は $$\pi-\theta~\mathrm{rad}$$ となる。
二辺の成す角が $$\theta=~\frac{\pi}{3}~\mathrm{rad}~(60^{\circ})$$ である三角形の三辺比
- $$x^2-y^2$$ : $$2xy-y^2$$ : $$x^2+y^2-xy$$
二辺の成す角が $$\theta=~\frac{\pi}{2}~\mathrm{rad}~(90^{\circ})$$ である三角形の三辺比
- $$x^2-y^2$$ : $$2xy$$ : $$x^2+y^2$$
二辺の成す角が $$\theta=~\frac{2\pi}{3}~\mathrm{rad}~(120^{\circ})$$ である三角形の三辺比
- $$x^2-y^2$$ : $$2xy+y^2$$ : $$x^2+y^2+xy$$