「微分方程式」の版間の差分

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\[v''(x)+g_1(x)v'(x)+g_2(x)v(x)=0\]
 
\[v''(x)+g_1(x)v'(x)+g_2(x)v(x)=0\]
 
が成立する。上の式の$$k$$倍と下の式の$$l$$倍を加えて整理すると
 
が成立する。上の式の$$k$$倍と下の式の$$l$$倍を加えて整理すると
\[(ku(x)+lv(x))''+g_1(x)(ku(x)+lv(x))+g_2(x)(ku(x)+lv(x))=0\]
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\[(ku(x)+lv(x))''+g_1(x)(ku(x)+lv(x))'+g_2(x)(ku(x)+lv(x))=0\]
 
が分かるが、これは解同士の線型結合$$ku(x)+lv(x)$$もまた元の微分方程式の解であることを示している。
 
が分かるが、これは解同士の線型結合$$ku(x)+lv(x)$$もまた元の微分方程式の解であることを示している。
加えて、線型斉次でない線型常微分方程式を線型非斉次常微分方程式と呼ぶ。線型非斉次はその微分方程式のある一つの解を用いることで線型斉次に帰着される。$$f$$についての線型非斉次常微分方程式は$$g_n(x)=1$$と$$k=0,1,2,\cdots,n-1$$に対応する関数$$g_k$$, 恒等的に$$0$$ではない関数$$h$$を用いて一般に
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また、線型斉次でない線型常微分方程式を線型非斉次常微分方程式と呼ぶ。線型非斉次はその微分方程式のある一つの解を用いることで線型斉次に帰着される。$$f$$についての線型非斉次常微分方程式は$$g_n(x)=1$$と$$k=0,1,2,\cdots,n-1$$に対応する関数$$g_k$$, 恒等的に$$0$$ではない関数$$h$$を用いて一般に
\[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^n}{dx^n}\right)f(x)=h(x)\]
+
\[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^k}{dx^k}\right)f(x)=h(x)\]
 
と書ける。ここでこの方程式の解の一つとして$$u$$を見つければそれは
 
と書ける。ここでこの方程式の解の一つとして$$u$$を見つければそれは
\[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^n}{dx^n}\right)u(x)=h(x)\]
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\[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^k}{dx^k}\right)u(x)=h(x)\]
 
を満たしている。この式を元の式から引くと
 
を満たしている。この式を元の式から引くと
\[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^n}{dx^n}\right)(f(x)-u(x))=0\]
+
\[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^k}{dx^k}\right)(f(x)-u(x))=0\]
 
であるので$$f_1(x)=f(x)-u(x)$$と置くとこれは線型斉次常微分方程式
 
であるので$$f_1(x)=f(x)-u(x)$$と置くとこれは線型斉次常微分方程式
\[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^n}{dx^n}\right)f_1(x)=0\]
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\[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^k}{dx^k}\right)f_1(x)=0\]
を解くことによって求められる。そして$$f(x)=f_1(x)+u(x)$$であるので元の線型非斉次常微分方程式を解くことができたことになる。
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を解くことによって求められる。そして$$f(x)=f_1(x)+u(x)$$であるので元の線型非斉次常微分方程式を解くことができる。
  
 
==偏微分方程式==
 
==偏微分方程式==
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という状態で左辺は$$y$$のみの式、右辺は$$x$$のみの式であるのでそのように呼ばれる。
 
という状態で左辺は$$y$$のみの式、右辺は$$x$$のみの式であるのでそのように呼ばれる。
 
====積分因子法====
 
====積分因子法====
この方法は積の微分則$$\{f(x)g(x)\}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(g)$$を巧みに使った手法である。$$\{f(x)u(x)\}'=f'(x)u(x)+f(x)u'(x)$$であるので元の微分方程式の両辺に$$u(x)$$を書けた
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この方法は積の微分則$$\{f(x)g(x)\}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(g)$$を巧みに使った手法である。微分可能な関数$$u$$について$$\{f(x)u(x)\}'=f'(x)u(x)+f(x)u'(x)$$であるので元の微分方程式の両辺に$$u(x)$$をかけた
 
\[f'(x)u(x)+f(x)g(x)u(x)=h(x)u(x)\]
 
\[f'(x)u(x)+f(x)g(x)u(x)=h(x)u(x)\]
 
と見比べて$$g(x)u(x)=u'(x)$$であると嬉しい。なぜならこの関係が成り立つとき
 
と見比べて$$g(x)u(x)=u'(x)$$であると嬉しい。なぜならこの関係が成り立つとき
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が成り立つので両辺を積分した後に$$u(x)$$で割れば
 
が成り立つので両辺を積分した後に$$u(x)$$で割れば
 
\[f(x)=\frac1{u(x)}\left(\int h(x)u(x)\,\mathrm dx+\mathrm C\right)\]
 
\[f(x)=\frac1{u(x)}\left(\int h(x)u(x)\,\mathrm dx+\mathrm C\right)\]
として$$f$$が求まるからである。$$u'(x)=g(x)u(x)$$を変数分離法を用いて解くと
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として$$f$$が求まるからである。$$u'(x)=g(x)u(x)$$を変数分離法を用いて解くと$$A$$を任意の定数として
 
\[u(x)=A\exp\left(\int g(x)\,\mathrm dx\right)\]
 
\[u(x)=A\exp\left(\int g(x)\,\mathrm dx\right)\]
となるので実際この方法はうまく行き元の微分方程式を解くことができる。ここで注意しなければならないことはgが定まらないように見えるときがあることである。実際に次の微分方程式
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となるので実際この方法はうまく行き元の微分方程式を解くことができる。また、この$$u$$は両辺にかけて用いるため定数倍の差は本質的にはないことになる。つまり両辺にかけるべき関数を改めて$$U(x)=u(x)/A$$などとすれば良い。ただし$$A=0$$の時は両辺に$$0$$をかける無意味な変形を表しているので考えない。また、注意しなければならないこととして$$u$$が微分可能な関数として定まらないように見えるときがある。実際に次の微分方程式
 
\[y'+\frac yx=2\]
 
\[y'+\frac yx=2\]
について考えよう。先の方法をそのまま用いると
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について考えよう。分母が$$0$$となることはないので$$x\neq0$$である。先の方法をそのまま用いると
\[u(x)=A\exp\left(\int\frac1x\,\mathrm dx\right)=Ae^{\log|x|}=A|x|\]
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\[u(x)=\exp\left(\int\frac1x\,\mathrm dx\right)=e^{\log|x|}=|x|\]
となるので$$u(x)$$が微分不可能であったり$$x$$によって場合分けをしたりする必要があるように見える。しかし、実際は両辺にかけるので符号の差異は両辺にうまく$$-1$$をかけることで解消され両辺に$$x$$をかけた場合と全く同じであることが分かる。つまり、考えるべき微分方程式は
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となるように見えるので$$u(x)$$が微分不可能であるかのように思われる。しかし、実際は複素関数論などの立場から見ると$$x\ne0$$の時
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\[\exp\left(\int\frac1x\,\mathrm dx\right)=x\]
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が成立するので$$u(x)=x$$とすれば良いのである。従って考えるべき微分方程式は
 
\[|x|y'+\frac{|x|}xy=2|x|\]
 
\[|x|y'+\frac{|x|}xy=2|x|\]
 
ではなく
 
ではなく
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y&=&x+\frac{\mathrm C}x
 
y&=&x+\frac{\mathrm C}x
 
\end{eqnarray*}\]
 
\end{eqnarray*}\]
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として解くことができる。
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===二階線型定数係数非斉次常微分方程式===
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関数$$f$$についての二階線型定数係数非斉次常微分方程式は定数$$a$$及び$$b$$と恒等的に$$0$$でない関数$$g$$を用いて
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\[f''(x)+af'(x)+bf(x)=g(x)\]
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と表せる。線型非斉次であるので同様に解の一つ$$u$$を用いて$$y(x)=f(x)-u(x)$$と置くと二階線型斉次常微分方程式
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\[y''+ay'+by=0\]
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に帰着される。ここで次のようにして二つの定数$$\alpha$$, $$\beta$$を定める。
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\[\begin{cases}\alpha+\beta&=-a\\\alpha\beta&=b\end{cases}\]
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この$$\alpha$$, $$\beta$$は解と係数の関係を考えることにより$$t$$についての二次方程式$$t^2+at+b=0$$の解であることが分かる。さて、この$$\alpha$$及び$$\beta$$を元の微分方程式に代入し整理すると
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\[y''-\beta y'=\alpha(y'-\beta y)\]
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となるがここで$$u(x)=y'-\beta y$$と置くとこの微分方程式は
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\[u'=\alpha u\]
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となるので簡単に解けて$$A_1$$を任意の定数として$$u(x)=A_1e^{\alpha x}$$となる。次に$$u(x)=y'-\beta y$$であるので
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\[y'-\beta y=A_1e^{\alpha x}\]
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を解けばよい。積分因子法を用いると両辺に$$e^{-\beta x}$$をかければよいことが分かるので
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\[\begin{eqnarray*}
 +
y'-\beta y&=&A_1e^{\alpha x}\\
 +
y'e^{-\beta x}-\beta ye^{-\beta x}&=&A_1e^{(\alpha-\beta)x}\\
 +
(ye^{-\beta x})'&=&A_1e^{(\alpha-\beta)x}
 +
\end{eqnarray*}\]
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と計算できる。しかし、ここで注意すべきことがある。それは$$\alpha=\beta$$となるような時とそうでない時で右辺の積分が全く異なることである。$$\alpha\neq\beta$$の時、両辺を積分して$$y$$について解くと$$B$$を任意の定数, $$A=A_1/(\alpha-\beta)$$として
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\[y(x)=Ae^{\alpha x}+Be^{\beta x}\]
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となる。$$\alpha=\beta$$の時$$e^{(\alpha-\beta)x}=1$$であるので両辺を積分して$$y$$について解くと$$B$$を任意の定数, $$A=A_1$$として
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\[y=(Ax+B)e^{\alpha x}=(Ax+B)e^{\beta x}\]
 
として解くことができる。
 
として解くことができる。

2021年1月2日 (土) 18:54時点における最新版

古典物理学において質点の運動はいわゆる運動方程式によって記述されると考えられてきた。運動方程式とは質点の質量$$m$$, 加速度$$\vec a$$, 外力$$\vec F$$を用いて$$m\vec a=\vec F$$と記述される方程式である。ただし、ほとんどの場合$$m$$は定数で$$\vec a$$と$$\vec F$$は時刻$$t$$に依存するベクトルである。ここでは簡単のために一次元内(直線上)での運動について考えよう。この時ベクトルは実数として表されるので考える方程式は$$ma=F$$と書ける。そして、加速度は変位の時間による二階導関数であるので質点の変位を$$x$$とするとこの方程式は次のように変形できる。 \[m\frac{d^2x(t)}{dt^2}=F(t).\] $$x$$と$$F$$が時刻$$t$$の関数であることを明示した。この関係式と与えられる初期条件(例えば$$x(0)=0,\,x'(0)=0$$など)から時刻$$t$$を用いて変位$$x$$を記述することが目標となる。この手順を一般化したものが微分方程式である。つまり未知関数の導関数たちを用いて表される方程式から未知関数を求める(これを微分方程式を解くと言う)ことが分かりやすい目標である。

常微分方程式

$$x$$の関数$$y$$の常微分方程式とは$$x$$, $$y$$及び$$y'$$, $$y''$$,...を用いた有限の項からなる方程式のことである。例えば

  • $$y'=x$$
  • $$y''=-y$$
  • $$y''+2y'+y=x$$
  • $$xyy'y''=1$$

などは$$x$$の関数$$y$$の常微分方程式である。そして常微分方程式は(実は後述の偏微分方程式についても同様であるが)二次方程式などにもあるようにその大まかな形によって類別されている。

階数

いわゆる方程式が式の未知変数の次数を用いて類別されるように微分方程式はこれから求める未知関数の導関数の階数を用いて類別される。例えば$$y'=0$$や$$y'+y=0$$などは一階常微分方程式、$$y''+y'+1=0$$や$$y''+y=0$$などは二階常微分方程式などと呼ばれる。これ以降も同様である。

線型・非線形

方程式が未知関数の一次式として書けるような常微分方程式を線型常微分方程式と呼ぶ。例えば \[f''(x)+f'(x)+f(x)=g(x)\Leftrightarrow\left(\frac{d^2}{dx^2}+\frac d{dx}+1\right)f(x)=g(x)\] などは線型常微分方程式である。さもなくば非線形常微分方程式と呼ばれる。

(線型)斉次・非斉次

全ての項が未知関数を含むか$$0$$であるような線型常微分方程式を線型斉次常微分方程式と呼ぶ。これは一般にとても良い性質を持っている。それは解同士の線型結合も解となることである。二階線型斉次常微分方程式についての証明を示そう。一般の$$f$$についての二階線型斉次常微分方程式は \[f''(x)+g_1(x)f'(x)+g_2(x)f(x)=0\] と書ける。ここで二つの関数$$u$$と$$v$$がこの微分方程式の解であるとすると \[u''(x)+g_1(x)u'(x)+g_2(x)u(x)=0\] \[v''(x)+g_1(x)v'(x)+g_2(x)v(x)=0\] が成立する。上の式の$$k$$倍と下の式の$$l$$倍を加えて整理すると \[(ku(x)+lv(x))''+g_1(x)(ku(x)+lv(x))'+g_2(x)(ku(x)+lv(x))=0\] が分かるが、これは解同士の線型結合$$ku(x)+lv(x)$$もまた元の微分方程式の解であることを示している。 また、線型斉次でない線型常微分方程式を線型非斉次常微分方程式と呼ぶ。線型非斉次はその微分方程式のある一つの解を用いることで線型斉次に帰着される。$$f$$についての線型非斉次常微分方程式は$$g_n(x)=1$$と$$k=0,1,2,\cdots,n-1$$に対応する関数$$g_k$$, 恒等的に$$0$$ではない関数$$h$$を用いて一般に \[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^k}{dx^k}\right)f(x)=h(x)\] と書ける。ここでこの方程式の解の一つとして$$u$$を見つければそれは \[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^k}{dx^k}\right)u(x)=h(x)\] を満たしている。この式を元の式から引くと \[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^k}{dx^k}\right)(f(x)-u(x))=0\] であるので$$f_1(x)=f(x)-u(x)$$と置くとこれは線型斉次常微分方程式 \[\left(\sum_{k=0}^ng_k(x)\frac{d^k}{dx^k}\right)f_1(x)=0\] を解くことによって求められる。そして$$f(x)=f_1(x)+u(x)$$であるので元の線型非斉次常微分方程式を解くことができる。

偏微分方程式

これまで考えてきた$$y$$は関数の中でも一変数関数であり、そうではなく多変数関数に対しても同様の方程式を考えるのは自然であろう。この場合微分は偏微分となるのでこのような多変数関数の偏微分を含む微分方程式は偏微分方程式と呼ばれる。

実際に微分方程式を解く

この項ではいくらかの比較的簡単な微分方程式を実際に解く。

一階線型常微分方程式

関数$$f$$についての一階線型常微分方程式は一般に関数$$g$$, $$h$$を用いて \[f'(x)+g(x)f(x)=h(x)\] と書ける。まずはこれを解いていく。

変数分離法

線型非斉次であるのである特殊解$$u$$を見つければ$$y(x)=f(x)-u(x)$$と置くとこれは線型斉次常微分方程式 \[y'(x)+g(x)y(x)=0\] に帰着される。$$g(x)y$$を移行し両辺を$$y$$で割ると \[\frac1y\frac{dy}{dx}=-g(x)\] となる。そして、両辺を$$x$$で積分することにより置換積分法から \[\int\frac1y\,\mathrm dy=\int-g(x)\,\mathrm dx\] となり、これより \[y=\pm\exp\left(-\int g(x)\,\mathrm dx\right)=A\exp\left(-\int g(x)\,\mathrm dx\right)\] が分かる。ただし$$A$$は積分定数から発生する定数なので積分定数を$$\mathrm C$$を積分定数として$$A=\pm e^{\mathrm C}\neq0$$であるが、元の微分方程式は$$y=0$$も解であるので$$A=0$$とできた方が都合がよい。従って一般解は$$A$$を任意の実数として \[y=A\exp\left(-\int g(x)\,\mathrm dx\right)\] と解ける。この方法は変数分離法と呼ばれる。途中で現れた \[\frac{y'}y=-g(x)\] という状態で左辺は$$y$$のみの式、右辺は$$x$$のみの式であるのでそのように呼ばれる。

積分因子法

この方法は積の微分則$$\{f(x)g(x)\}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(g)$$を巧みに使った手法である。微分可能な関数$$u$$について$$\{f(x)u(x)\}'=f'(x)u(x)+f(x)u'(x)$$であるので元の微分方程式の両辺に$$u(x)$$をかけた \[f'(x)u(x)+f(x)g(x)u(x)=h(x)u(x)\] と見比べて$$g(x)u(x)=u'(x)$$であると嬉しい。なぜならこの関係が成り立つとき \[f'(x)u(x)+f(x)g(x)u(x)=f'(x)u(x)+f(x)u'(x)=\{f(x)u(x)\}'=h(x)u(x)\] が成り立つので両辺を積分した後に$$u(x)$$で割れば \[f(x)=\frac1{u(x)}\left(\int h(x)u(x)\,\mathrm dx+\mathrm C\right)\] として$$f$$が求まるからである。$$u'(x)=g(x)u(x)$$を変数分離法を用いて解くと$$A$$を任意の定数として \[u(x)=A\exp\left(\int g(x)\,\mathrm dx\right)\] となるので実際この方法はうまく行き元の微分方程式を解くことができる。また、この$$u$$は両辺にかけて用いるため定数倍の差は本質的にはないことになる。つまり両辺にかけるべき関数を改めて$$U(x)=u(x)/A$$などとすれば良い。ただし$$A=0$$の時は両辺に$$0$$をかける無意味な変形を表しているので考えない。また、注意しなければならないこととして$$u$$が微分可能な関数として定まらないように見えるときがある。実際に次の微分方程式 \[y'+\frac yx=2\] について考えよう。分母が$$0$$となることはないので$$x\neq0$$である。先の方法をそのまま用いると \[u(x)=\exp\left(\int\frac1x\,\mathrm dx\right)=e^{\log|x|}=|x|\] となるように見えるので$$u(x)$$が微分不可能であるかのように思われる。しかし、実際は複素関数論などの立場から見ると$$x\ne0$$の時 \[\exp\left(\int\frac1x\,\mathrm dx\right)=x\] が成立するので$$u(x)=x$$とすれば良いのである。従って考えるべき微分方程式は \[|x|y'+\frac{|x|}xy=2|x|\] ではなく \[xy'+y=2x\] となる。この後は先に示した通りに \[\begin{eqnarray*} xy'+y&=&2x\\ (xy)'&=&2x\\ xy&=&x^2+\mathrm C\\ y&=&x+\frac{\mathrm C}x \end{eqnarray*}\] として解くことができる。

二階線型定数係数非斉次常微分方程式

関数$$f$$についての二階線型定数係数非斉次常微分方程式は定数$$a$$及び$$b$$と恒等的に$$0$$でない関数$$g$$を用いて \[f''(x)+af'(x)+bf(x)=g(x)\] と表せる。線型非斉次であるので同様に解の一つ$$u$$を用いて$$y(x)=f(x)-u(x)$$と置くと二階線型斉次常微分方程式 \[y''+ay'+by=0\] に帰着される。ここで次のようにして二つの定数$$\alpha$$, $$\beta$$を定める。 \[\begin{cases}\alpha+\beta&=-a\\\alpha\beta&=b\end{cases}\] この$$\alpha$$, $$\beta$$は解と係数の関係を考えることにより$$t$$についての二次方程式$$t^2+at+b=0$$の解であることが分かる。さて、この$$\alpha$$及び$$\beta$$を元の微分方程式に代入し整理すると \[y''-\beta y'=\alpha(y'-\beta y)\] となるがここで$$u(x)=y'-\beta y$$と置くとこの微分方程式は \[u'=\alpha u\] となるので簡単に解けて$$A_1$$を任意の定数として$$u(x)=A_1e^{\alpha x}$$となる。次に$$u(x)=y'-\beta y$$であるので \[y'-\beta y=A_1e^{\alpha x}\] を解けばよい。積分因子法を用いると両辺に$$e^{-\beta x}$$をかければよいことが分かるので \[\begin{eqnarray*} y'-\beta y&=&A_1e^{\alpha x}\\ y'e^{-\beta x}-\beta ye^{-\beta x}&=&A_1e^{(\alpha-\beta)x}\\ (ye^{-\beta x})'&=&A_1e^{(\alpha-\beta)x} \end{eqnarray*}\] と計算できる。しかし、ここで注意すべきことがある。それは$$\alpha=\beta$$となるような時とそうでない時で右辺の積分が全く異なることである。$$\alpha\neq\beta$$の時、両辺を積分して$$y$$について解くと$$B$$を任意の定数, $$A=A_1/(\alpha-\beta)$$として \[y(x)=Ae^{\alpha x}+Be^{\beta x}\] となる。$$\alpha=\beta$$の時$$e^{(\alpha-\beta)x}=1$$であるので両辺を積分して$$y$$について解くと$$B$$を任意の定数, $$A=A_1$$として \[y=(Ax+B)e^{\alpha x}=(Ax+B)e^{\beta x}\] として解くことができる。