「素微分」の版間の差分

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\text{ld}(90)=&ld(2\cdot 3^2\cdot 5)\\
 
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=&\frac12+\frac23+\frac15\\
 
=&\frac12+\frac23+\frac15\\
=&\frac65
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=&\frac{41}{30}
 
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:$$\text{ld}(n^k)=k\text{ld}(n)$$
 
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=== 応用例 ===
 
=== 応用例 ===
  

2020年5月20日 (水) 01:17時点における版

素微分(そびぶん、Arithmetic derivative)とは、数値に対して定義された微分の類似物である。

一般の微分法では、定数は微分すると0になるが、素微分では、定数は素微分しても0になるとは限らない。

そのため、一般の微分法とは異なる手法であることに注意していただきたい。

以下、特に断りがない限り$$a,b\in \mathbb{N},p$$:素数とする。

定義

自然数$$n$$に対しその素微分$$n'$$を

$$n'= \begin{cases} 0\:(n=1~のとき~)\\ 1\:(n=p~のとき~)\\ a'b+ab'\:(n=ab~のとき~) \end{cases}$$

と定義する。

これは、

$$\displaystyle n=\prod_{i=0}^{j-1}p_i^{q_i}$$

とかけるとき($$p_i$$は小さいほうから$$i$$番目の素数)

$$\displaystyle n'=n\sum_{i=0}^{j-1}\frac{q_i}{p_i}$$

と一般化される。(ライプニッツ則)

この形から、素因数分解の一意性が成り立つことより素微分も一意に定まることが容易にわかる。

また

$$n'>n,n'<n,n'=n$$

となるとき、$$n$$をそれぞれ素微分過剰数,素微分不足数,素微分完全数という。

$$\begin{align*} 14'=&(2\times 7)'\\ =&2'\times 7 +2\times 7'\\ =&7+2\\ =&9 \end{align*}$$

(素微分不足数)

$$\begin{align*} 12'=&(2^2\times 3)'\\ =&12\times\left(1+\frac13\right)\\ =&12\times \frac43\\ =&16 \end{align*}$$

(素微分過剰数)

性質

簡単にわかる性質として

$$0'=0$$
$$(a^b)'=a'ba^{b-1}$$

特に

$$(p^a)'=ap^{a-1},(p^p)'=p^p$$

が成り立つ。

拡張

整数

$$(-a)'=-a'$$

とすると、負の整数に素微分を拡張できる。

有理数

$$a\neq 0$$とする。このとき

$$\displaystyle\left(\frac{b}{a}\right)'=\frac{ab'-a'b}{a^2}$$

と定義する。

一部の無理数

$$a,b\in \mathbb{Q}$$とする。

このとき$$a^b$$の形に限っては素微分が可能である。

$$(a^b)'=a'ba^{b-1}$$

と、自然数と同様の形で定義できる。

複素数

複素数への拡張に際して、便宜上、絶対値が$$1$$であるような数の素微分は$$0$$と定義する。

つまり$$i$$を虚数単位とするとき

$$\begin{align*} (a+bi)'=&\left(|a+bi|e^{i\textrm{Arg}(a+bi)}\right)'\\ =&|a+bi|'e^{i\textrm{Arg}(a+bi)}\\ =&\left(\sqrt{a^2+b^2}\right)'e^{i\textrm{Arg}(a+bi)}\\ =&\frac{(a^2+b^2)'}{2(a^2+b^2)}(a+bi) \end{align*}$$

となる。

対数素微分

ある数$$a$$に対し、

$$\begin{align*} \text{ld}(a)=&\frac{a'}{a}\\ =&\sum_{i=0}^{j-1}\frac{q_i}{p_i} \end{align*}$$

を$$a$$の対数素微分(関数)(arithmetically logarithmic (function))という。

この関数は自然数に対し完全加法的である。

$$\begin{align*} \text{ld}(90)=&ld(2\cdot 3^2\cdot 5)\\ =&\frac12+\frac23+\frac15\\ =&\frac{41}{30} \end{align*}$$
$$\text{ld}(n^k)=k\text{ld}(n)$$

応用例

この関数を使うと、素微分完全数が$$p^p$$の形に限られることが容易に示せる。

(証明)

素微分完全数$$a$$を$$a=p^kn$$($$p$$は素数で$$p$$と$$n$$は互いに素な自然数)と書くと

$$\begin{align*} \text{ld}(a)=&\text{ld}(p^kn)\\ =&k\text{ld}(p)+\text{ld}(n)\\ =&\frac{k}{p}+\frac{n'}{n} \end{align*}$$

ここで$$a$$が素微分完全数であるから$$a=a'$$より$$\text{ld}(a)=1$$である。

よって

$$\begin{align*} \frac{k}{p}+\frac{n'}{n}=&1\\ kn+pn'=&pn\\ p(n-n')=&kn\\ p(1-\text{ld}(n))=&k \end{align*}$$

$$p,k\in \mathbb{N}$$より

$$1-\text{ld}(n)\geqq 1\cdots(1)$$

が成り立ち、$$n\in \mathbb{N}$$から$$\text{ld}(n)\geqq 0$$となるから$$(1)$$と合わせて$$\text{ld}(n)=0$$となって$$n=1$$が分かる。

よって$$p=k,n=1$$より、$$a=p^p$$となる。

(証明終)

不等式

$$\displaystyle n=\prod_{i=0}^{j-1}p_i^{q_i}$$としたとき

$$\displaystyle n'=n\sum_{i=0}^{j-1}\frac{q_i}{p_i}$$となって

$$j$$変数の相加相乗平均を用いることで、

$$n'\geqq\Omega(n)n^{\frac{\Omega(n)-1}{\Omega(n)}}$$を得る。(等号成立は$$n=p^a$$のとき)

未解決問題

素微分友愛数

$$n,m\in \mathbb{N}$$とする。

$$\begin{align*} n'=&m\\ m'=&n\\ \end{align*}$$

を満たす$$m,n$$の組を素微分友愛数とする。

現在、素微分完全数以外の素微分友愛数は見つかっておらず、存在するかしないかの証明も存在しない。